1−1.はじめに 〜手引きのねらい〜
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a.
| 「埼玉県放課後児童クラブ運営基準(以下「運営基準」)」を「絵に描いた餅」に終わらせず、施策改善実現の道具(ツール)として活用する方法を提示する。 |
b. | 学童保育の関係者の側が県基準をどう活用して市町村担当課に要求するか、具体例
を紹介する。(切り口は「点検表集計結果」による各学童の比較から) |
1−2.「埼玉県放課後児童クラブ運営基準とは」 |
@ | 「運営基準」の策定と県としての活用 |
| a. | 埼玉県当局が策定した、学童保育の「最低基準」。 |
| b. | 県内の9つの市町村の児童福祉担当者を集めて、一年間かけて作成。 |
| c. | パブリックコメントを経、現場の実体をかなり反映したものに。
(県連協の意見を8割以上取り入れている。) |
| d. | 「点検表」の作成と点検事業の実施、点検結果の公開。
→2・3 |
| e. | 「わがまち子育て総合支援事業」を用いての「活用(改善)事業」。
→ 4 |
| f. | 一定年度ごとに内容を見直し、よりレベルアップをはかる。 |
A | 「運営基準」の策定の意義 |
| a. | 初めての本格的「基準」: |
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| ・基準がない中で、施策が進まなかった。この事態を打開できる可能性を持つ。
・施設の基準を持つ自治体はわずか日本中でわずかに43(2%、約2900中)。 |
| d. | 大きな反響と影響: |
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| ・「運営基準」による改善→新座市・今市市「新築・増築の際、「運営基準」に沿った施設の広さを実現」、栗橋町「指導員配置を、「運営基準」に沿って増員」……
・広がる「基準」策定の動き。さいたま市、栃木県、群馬県、千葉県…… |
| c. | 今後策定されるであろう全国レベルの基準のモデルに |
B | 「運営基準」の内容と特色 |
| a. | 「対象児童は6年生までとする」(「運営基準」P.1)
→高学年も対象とした |
| b. | 「クラブ室の広さは児童一人につき、設備部分を除いて、1.65u以上」
(「運営基準」P.2,P.32)
→施設の基準明記 |
| c. | 「指導員を常時・複数配置」(「運営基準」P.2,P.37)
→指導員の配置基準明記 |
| d. | 「集団活動を指導できる規模は、40人を限度。41人を超えている場合には、複数の集団活動ができる体制を」(「運営基準」P.3)
→大規模化への歯止め |
| e. | 「指導員の資格は、最低母子指導員資格」(「運営基準」P.39)
→指導員の資格に言及 |
| f. | 「年間計画等の策定、クラブ便り月一回以上の発行」(「運営基準」P.50)
→保育内容に言及、保育の質の向上 |
| g. | 「保護者の運営への参画」(「運営基準」P.50)
→保護者と運営側・指導員との連携強調 |
| h. | 「障害児の受入は極力障害児及び保護者の立場に立つ」(「運営基準」P.51)
→障害児の受入促進
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2.活用方法(1) 〜点検表の活用〜 |
@ | 点検表の概要 |
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・ | 「運営基準」に沿って、57の点検項目。(別紙参照)
→「県連協のHP」に、エクセル版の「点検表」を掲載。 |
A | 集計と結果の公開 |
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・ | 自治体ごとの点検結果を集計し(2004/8)、公開。 |
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| →「埼玉県庁HP、健康福祉部子ども家庭課」にて公開中。
→「新座市学童保育の会HP」にエクセル版に加工したものが掲載。 |
B | 取組の課題 |
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・ | 点検結果を活用する四つの視点 |
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| a. | 市町村・議会に施策の遅れを認識させる |
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| (例)
ア) 対象児童(Q1):「小4〜6」を対象としていない例
イ) 必要面積(Q2・Q18):1人当たり面積の周辺市町村との比較
ウ) 定員弾力化と適正規模(Q4〜5):「概ね40名」を超えた場合の対応を比較。 |
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| b. | 私たち学童クラブ側の自己点検・自己評価 |
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| (例)
エ) 入室の手続き、入室の決定、苦情処理(Q12・15・54):入所前にきちんと説明しているか? 入室決定方法は適切か? 問題が生じた場合の対処方法は?
オ) 指導員の職務等(Q30・45):おたより・保育計画とまとめ・クラブだより等、ちゃんと行っているか?
カ) 健康診断とおやつ(Q34・39):手作りおやつと検便実施の有無、アレルギー対応等、子どもの健康・安全への配慮・対応は? |
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| c. | 市町村と課題を共有する機会に |
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| (例)
キ)点検作業を、行政担当者とクラブ側とが共同で行うことを通して、学童保育の現況と、抱える課題を共有する。→改善への第一歩 |
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| d. | 市町村担当課へ働きかける |
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| (例)
ク)次世代「市町村行動計画」に定めた「設置目標数」の実現を求める
ケ)活用できる公的資金を担当課へ教える
@「児童厚生施設整備費」(国、学童保育専用施設にも使える)
A「保育環境改善等事業費」(国、学童保育専用施設の設置、障害児入所のための改修)
B「放課後ボランティア事業」(国、一市町村あたり、30万円)
C「次世代育成支援対策施設整備費」(国、国庫補助対象外のクラブのみ)
D「運営基準活用促進事業」(県) → 4 |
*各地域連協・クラブは「運営基準」「点検結果」を読み込み、自らの改善目標を定めていく。
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3.「活用方法(1)」の具体例 |
| <例>児童1人について確保されている広さを検証しよう!
≪全体平均2.34u≫ |
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点検表に出ている必要面積(Q2)は正しいものでしょうか? |
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・ | 必要面積とは、児童が生活(休息・遊び・学習など)するスペースで、設備部分を除いたものです(「運営基準」P.2)。 |
| ※確かめよう ⇒担当課は図面で算出しましたか? 設備の調査はありましたか?
根拠となる資料をもらいましょう。 |
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| ●公設の施設が行政財産として正しく維持管理されているか。民設の場合にも現況確認をさせましょう。実態を把握させることが責任追及の第一歩です。 |
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1.65u/人を下回る学童の生活実態を明らかにしましょう! |
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・ | 平均値が発表されても基準以下の施設の生活実態は理解できません。 |
| ※調べてみよう ⇒基準をクリアした施設とできなかった施設の実態比較を。 |
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| ・子どもと指導員の生の声をアンケートに。
・できる行事や運営方法などが面積でどう違ってくるか。
・近隣や同規模市町村との比較もプレッシャーに。 |
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| ●同じ住民なのに受けられるサービスの質が異なる実態を、ビジュアルに示しましょう。子どもの実感や指導員の分析を根拠に、保護者を動かしましょう。 |
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実態を見せた上で今後どう対応するのか、担当課と話し合いましょう! |
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| ※案を作ろう ⇒限られた条件の下で、どんな増築(建替え)を目指すのか。
『モデル施設図』を描き、改善要望を具体化し交渉しよう。 |
| ※「運営基準」を根拠に、担当課にも悩んでもらおう。 |
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| ・定員の弾力化も限界があります。
⇒集団活動を指導できる規模は40人が限度、が定説です(「運営基準」P.3)
・施設の現状を担当課がどう見るかで、「運営内容」の説明も変わります。
⇒入室時の説明会で、市町村も説明責任を果たすこと!(「運営基準」P.18)
・利用者から、施設に関して苦情を受け付けることもありえます。
⇒施設に関する苦情は、行政側の第三者委員の方に答えてもらいますよ!
(「運営基準」P.55) |
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| ●改善が必要だと本音で理解してもらえたらこっちのもの。どんな財源が活用できるのか教えてあげましょう。(県の助成策については後述)
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4.活用方法(2) 〜「運営基準活用促進事業」の活用を市町村に働きかけよう〜 |
@ | 「運営基準活用促進事業」とは? |
| a. | 埼玉県が基準策定初年度(2004年度)に実施を始めた補助事業。 |
| b. | 「運営基準」に照らしたところ、基準に満たないところがあった。そこで、それを改善しようとして取り組む事業に対して交付される補助金。
例)
施設の面積が狭かった → 増築する
おたよりが毎月出せていなかった →
印刷機を購入する |
| c. | 実際には、埼玉県の単独事業である「わがまち子育て総合支援市町村自主事業補助金」が適用される。 |
| d. | 市町村が直接事業を実施するケース(直営方式)と、団体(父母会等)の事業に補助するケースのいずれもが、補助の対象となります。 |
| e. | 2004年度の予算総額は、2550万円。1事業の予算は、下限10万円〜上限1000万円。 |
| f. | 県と市町村の負担は、1/2ずつ。 |
A | 2004年度の状況 |
●2004年度は、応募した13の市町村のうち、所沢市、日高市、児玉町、美里町、北本市、都幾川村、東松山市の7市町村が対象となり、増築や設備・備品整備などを実施。 |
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| | <<2004年度の手続きの流れ>> |
| 1. | 7月16日付で、埼玉県が市町村に、活用事業について通達。 |
| 2. | 事業を活用する意志のある市町村は、「運営基準」に基づいて施設・設備等を点検・確認し、事業計画の骨子を作成。8月26日付けで、計画案の骨子を県に報告。 |
| 3. | 市町村は、補正予算獲得に向けた庁内折衝(担当課と財務部局)。 |
| 4. | 埼玉県は、計画の骨子を審査し、採用する市町村を決定。当該市町村に内定を内示。 |
| 5. | 内定通知を受けた市町村は、保護者・指導員との意見交換を実施し、活用(改善)計画書を作成し、県に対して正式に応募。同時に補助金を申請。 |
| 6. | 9月30日付で、県が市町村の活用(改善)計画書を受理。 |
| 7. | 県庁内で正式審査を経て交付決定。選定市町村に正式に通知。 |
| 8. | 市町村において活用(改善)事業実施。 |
| 9. | 事業完了後、市町村は県に報告書提出。 |
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B | 今後の活用の留意点 |
| a. | 県がこの事業を各市町村に正式に通達するのは、2005年度も当該年度が始まってからになる模様。 |
| b. | よって、ほとんどの市町村では、この事業について、当初予算には計上されないものと思われる。担当者も県の通達によってこの事業を知ることになりそうです。 |
| c. | 従って、この事業を活用しようと思った学童保育クラブ(地域連協)は、いち早く年度当初にこの事業について担当者に知らせ、強く働きかけて、担当者をその気にさせることが何よりも重要になります。 |
| d. | なお、2004年度においては、事業実施団体の選定(審査)は、実際はかなり早い時期(8月中)に行われた模様。 |
| e. | 2004年度にこの事業を実施した市町村が、2005年度に連続して実施(補助金を獲得)することは、可能であると思われます。 |
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