第2章 事業の対象となる子どもの発達
放課後児童クラブでは、放課後等に子どもの発達段階に応じた主体的な遊びや生活が可能となるようにすることが求められる。このため、放課後児童支援員等は、子どもの発達の特徴や発達過程を理解し、発達の個人差を踏まえて一人ひとりの心身の状態を把握しながら育成支援を行うことが必要である。
1.子どもの発達と児童期
6歳から12 歳は、子どもの発達の時期区分において幼児期と思春期・青年期との間にあり、児童期と呼ばれる。
児童期の子どもは、学校、放課後、家庭のサイクルを基本とした生活となる。
学校において基礎学力が形成されることに伴い、知的能力や言語能力、規範意識等が発達する。また、身長や体重の増加に伴って体力が向上し、遊びも活発化する。
社会性の発達に伴い、様々な仲間集団が形成されるなど、子ども同士の関わりも変化する。さらに、想像力や思考力が豊かになることによって遊びが多様化し、創意工夫が加わった遊びを創造できるようになる。
児童期には、幼児期の発達的特徴を残しつつ、思春期・青年期の発達的特徴の芽生えが見られる。子どもの発達は、行きつ戻りつの繰り返しを経ながら進行していく。
子どもは、家庭や学校、地域社会の中で育まれる。大人との安定した信頼関係のもとで、「学習」、「遊び」等の活動、十分な「休息」、「睡眠」、「食事」等が保障されることによって、子どもは安心して生活し育つことができる。
2.児童期の発達の特徴
児童期の発達には、主に次のような特徴がある。
- ○ ものや人に対する興味が広がり、その興味を持続させ、興味の探求のために自らを律することができるようになる。
- ○ 自然や文化と関わりながら、身体的技能を磨き、認識能力を発達させる。
- ○ 学校や放課後児童クラブ、地域等、子どもが関わる環境が広がり、多様な他者との関わりを経験するようになる。
- ○ 集団や仲間で活動する機会が増え、その中で規律と個性を培うとともに、他者と自己の多様な側面を発見できるようになる。
- ○ 発達に応じて「親からの自立と親への依存」、「自信と不安」、「善悪と損得」、「具体的思考と抽象的思考」等、様々な心理的葛藤を経験する。
3.児童期の発達過程と発達領域
児童期には、特有の行動が出現するが、その年齢は固定的なものではなく、個人差も大きい。目安として、おおむね6歳~8歳(低学年)、9歳~10歳(中学年)、11 歳~12歳(高学年)の3つの時期に区分することができる。なお、この区分は、同年齢の子どもの均一的な発達の基準ではなく、一人ひとりの子どもの発達過程を理解する目安として捉えるべきものである。
(1)おおむね6歳~8歳
子どもは学校生活の中で、読み書きや計算の基本的技能を習得し、日常生活に必要な概念を学習し、係や当番等の社会的役割を担う中で、自らの成長を自覚していく。一方で、同時にまだ解決できない課題にも直面し、他者と自己とを比較し、葛藤も経験する。
遊び自体の楽しさの一致によって群れ集う集団構成が変化し、そこから仲間関係や友達関係に発展することがある。ただし、遊びへの参加がその時の気分に大きく影響されるなど、幼児的な発達の特徴も残している。
ものや人に対する興味が広がり、遊びの種類も多様になっていき、好奇心や興味が先に立って行動することが多い。
大人に見守られることで、努力し、課題を達成し、自信を深めていくことができる。その後の時期と比べると、大人の評価に依存した時期である。
(2)おおむね9歳~10 歳
論理的な思考や抽象的な言語を用いた思考が始まる。道徳的な判断も、結果だけに注目するのではなく、動機を考慮し始める。また、お金の役割等の社会の仕組みについても理解し始める。
遊びに必要な身体的技能がより高まる。
同年代の集団や仲間を好み、大人に頼らずに活動しようとする。他者の視線や評価に一層敏感になる。
言語や思考、人格等の子どもの発達諸領域における質的変化として表れる「9、10歳の節」と呼ばれる大きな変化を伴っており、特有の内面的な葛藤がもたらされる。この時期に自己の多様な可能性を確信することは、発達上重要なことである。
(3)おおむね11 歳~12 歳
学校内外の生活を通じて、様々な知識が広がっていく。また、自らの得意不得意を知るようになる。
日常生活に必要な様々な概念を理解し、ある程度、計画性のある生活を営めるようになる。
大人から一層自立的になり、少人数の仲間で「秘密の世界」を共有する。友情が芽生え、個人的な関係を大切にするようになる。
身体面において第2次性徴が見られ、思春期・青年期の発達的特徴が芽生える。しかし、性的発達には個人差が大きく、身体的発育に心理的発達が伴わない場合もある。
4.児童期の遊びと発達
放課後児童クラブでは、休息、遊び、自主的な学習、おやつ、文化的行事等の取り組みや、基本的な生活に関すること等、生活全般に関わることが行われる。その中でも、遊びは、自発的、自主的に行われるものであり、子どもにとって認識や感情、主体性等の諸能力が統合化される他に代えがたい不可欠な活動である。
子どもは遊びの中で、他者と自己の多様な側面を発見できるようになる。そして、遊びを通じて、他者との共通性と自身の個性とに気付いていく。
児童期になると、子どもが関わる環境が急速に拡大する。関わる人々や遊びの種類も多様になり、活動範囲が広がる。また、集団での遊びを継続することもできるようになっていく。その中で、子どもは自身の欲求と相手の欲求を同時に成立させるすべを見いだし、順番を待つこと、我慢すること、約束を守ることや平等の意味等を身に付け、協力することや競い合うことを通じて自分自身の力を伸ばしていく。
子どもは、遊びを通じて成功や失敗の経験を積み重ねていく。子どもが遊びに自発的に参加し、遊びの楽しさを仲間の間で共有していくためには、大人の援助が必要なこともある。
5.子どもの発達過程を踏まえた育成支援における配慮事項
放課後児童支援員等は、子どもの発達過程を踏まえ、次に示す事項に配慮して子ども一人ひとりの心身の状態を把握しながら、集団の中での子ども同士の関わりを大切にして育成支援を行うことが求められる。
(1)おおむね6歳~8歳の子どもへの配慮
- ○ 幼児期の発達的特徴も見られる時期であることを考慮する。
- ○ 放課後児童支援員等が身近にいて、子どもが安心して頼ることのできる存在になれるように心掛ける。
- ○ 子どもは遊びに夢中になると時間や場所を忘れることがある。安全や健康を管理するために子どもの時間と場所に関する意識にも目を届かせるようにする。
(2)おおむね9歳~10 歳の子どもへの配慮
- ○ 「9、10 歳の節」と呼ばれる発達諸領域における質的変化を伴うことを考慮して、子どもの意識や感情の変化を適切に捉えるように心掛ける。
- ○ 同年代の仲間との関わりを好み、大人に頼らず活動しようとする、他の子どもの視線や評価に敏感になるなど、大人に対する見方や自己と他者への意識や感情の発達的特徴の理解に基づいた関わりをする。
(3)おおむね11歳~12歳の子どもへの配慮
- ○ 大人から一層自立的になるとともに、子ども同士の個人的な関係を大切にするようになるなどの発達的特徴を理解することに努め、信頼に基づく関わりを心掛ける。
- ○ ある程度、計画性のある生活を営めるようになる時期であることを尊重し、子ども自身が主体的な遊びや生活ができるような関係を大切にする。
- ○ 思春期・青年期の発達的特徴が芽生えることを考慮し、性的発達を伴う身体的発育と心理的発達の変化について理解し、適切な対応をする。
(4)遊びと生活における関わりへの配慮
子どもの遊びへの関わりは、安全の確保のような間接的なものから、大人が自ら遊びを楽しむ姿を見せるというような直接的なものまで、子どもの発達や状況に応じた柔軟なものであることが求められる。また、その時々の子どもの体調や気分によって、遊びの選択や子ども同士の関わり方が異なることを理解することも必要である。
子どもは時に大人の指示を拒んだり、反抗的に見える態度をとったりすることもある。子どもの言動の背景を理解することが求められる。子どもが放課後児童クラブの中でお互いの役割を理解し合って生活していくためには、子ども同士の中での自律的な関係を認めつつ、一人ひとりの意識や発達の状況にも十分に配慮する必要がある。