第3章 放課後児童クラブにおける育成支援の内容
1.育成支援の内容
- (1)放課後児童クラブに通う子どもは、保護者が労働あるいは疾病や介護等により授業の終了後の時間帯(放課後、学校休業日)に子どもの養育ができない状況によって、放課後児童クラブに通うことが必要となっているため、その期間を子どもが自ら進んで通い続けるためには、放課後児童支援員等が保護者と連携して育成支援を行う必要がある。
- (2)放課後児童クラブは、年齢や発達の状況が異なる多様な子ども達が一緒に過ごす場である。放課後児童支援員等には、それぞれの子どもの発達の特徴や子ども同士の関係を捉えながら適切に関わることで、子どもが安心して過ごせるようにし、一人ひとりと集団全体の生活を豊かにすることが求められる。
- (3)子どもの発達や養育環境の状況等を把握し、子どもが発達面や養育環境等で固有の援助を必要としている場合には、その援助を適切に行う必要がある。
- (4)子どもにとって放課後児童クラブが安心して過ごせる生活の場であり、放課後児童支援員等が信頼できる存在であることを前提として、放課後児童クラブにおける育成支援には、主に次のような内容が求められる。
- ① 子どもが自ら進んで放課後児童クラブに通い続けられるように援助する。
- ・放課後児童クラブに通うことについて、その必要性を子どもが理解できるように援助する。
- ・放課後児童支援員等は、子どもの様子を日常的に保護者に伝え、放課後児童支援員等と保護者がお互いに子どもの様子を伝え合えるようにする。
- ・子どもが放課後児童クラブに通うことに関して、学校と情報交換し、連携する。
- ・子どもの遊びや生活の環境及び帰宅時の安全等について、地域の人々の理解と協力が得られるようにする。
- ② 子どもの出欠席と心身の状態を把握して、適切に援助する。
- ・子どもの出欠席についてあらかじめ保護者からの連絡を確認しておくとともに、連絡なく欠席したり来所が遅れたりした子どもについては速やかに状況を把握して適切に対応する。
- ・子どもの来所時には、子どもが安心できるように迎え入れ、子ども一人ひとりの心身の状態を把握する。
- ・遊びや生活の場面における子どもの状況や体調、情緒等を把握し、静養や気分転換が必要な時には適切に対応する。なお、病気やケガの場合は、速やかに保護者と連絡をとる。
- ③ 子ども自身が見通しを持って主体的に過ごせるようにする。
- ・子どもが放課後児童クラブでの過ごし方について理解できるようにし、主体的に生活できるように援助する。
- ・放課後児童支援員等は、子ども全体に共通する生活時間の区切りをつくり、柔軟に活用して子どもが放課後の時間を自己管理できるように援助する。
- ・放課後児童クラブにおける過ごし方や生活時間の区切り等は、保護者にも伝えて理解を得ておく。
- ④ 放課後児童クラブでの生活を通して、日常生活に必要となる基本的な生活習慣を習得できるようにする。
- ・手洗いやうがい、持ち物の管理や整理整頓、活動に応じた衣服の着脱等の基本的な生活習慣が身に付くように援助する。
- ・子ども達が集団で過ごすという特性を踏まえて、一緒に過ごす上で求められる協力及び分担や決まりごと等を理解できるようにする。
- ⑤ 子どもが発達段階に応じた主体的な遊びや生活ができるようにする。
- ・子ども達が協力し合って放課後児童クラブの生活を維持していくことができるようにする。その際、年齢や発達の状況が異なる子ども達が一緒に生活していることを考慮する。
- ・子どもが仲間関係をつくりながら、自発的に遊びをつくり出すことができるようにする。
- ・遊びや生活の中で生じる意見の対立やけんかなどについては、お互いの考え方の違いに気付くこと、葛藤の調整や感情の高ぶりを和らげること等ができるように、適切に援助する。
- ・子どもの間でいじめ等の関係が生じないように配慮するとともに、万一そのような問題が起きた時には早期対応に努め、放課後児童支援員等が協力して適切に対応する。
- ・屋内外ともに子どもが過ごす空間や時間に配慮し、発達段階にふさわしい遊びと生活の環境をつくる。その際、製作活動や伝承遊び、地域の文化にふれる体験等の多様な活動や遊びを工夫することも考慮する。
- ・子どもが宿題、自習等の学習活動を自主的に行える環境を整え、必要な援助を行う。
- ・放課後児童クラブの子ども達が地域の子ども達と一緒に遊んだり活動したりする機会を設ける。
- ・地域での遊びの環境づくりへの支援も視野に入れ、必要に応じて保護者や地域住民が協力しながら活動に関わることができるようにする。
- ⑥ 子どもが自分の気持ちや意見を表現することができるように援助し、放課後児童クラブの生活に主体的に関わることができるようにする。
- ・子ども一人ひとりの放課後児童クラブでの生活状況を把握しながら、子どもの情緒や子ども同士の関係にも配慮し、子どもの意見を尊重する。
- ・子どもが放課後児童支援員等に悩みや相談事も話せるような信頼関係を築く。
- ・行事等の活動では、企画の段階から子どもの意見を反映させる機会を設けるなど、様々な発達の過程にある子どもがそれぞれに主体的に運営に関わることができるように工夫する。
- ⑦ 子どもにとって放課後の時間帯に栄養面や活力面から必要とされるおやつを適切に提供する。
- ・発達過程にある子どもの成長にあわせて、放課後の時間帯に必要とされる栄養面や活力面を考慮して、おやつを適切に提供する。おやつの提供に当たっては、補食としての役割もあることから、昼食と夕食の時間帯等を考慮して提供時間や内容、量等を工夫する。
- ・おやつの提供に際しては、安全及び衛生に考慮するとともに、子どもが落ちついて食を楽しめるようにする。
- ・食物アレルギーのある子どもについては、配慮すべきことや緊急時の対応等について事前に保護者と丁寧に連絡を取り合い、安全に配慮して提供する。
- ⑧ 子どもが安全に安心して過ごすことができるように環境を整備するとともに、緊急時に適切な対応ができるようにする。
- ・子どもが自分で避けることのできない危険に遭遇しないように、遊びと生活の環境について安全点検と環境整備を行う。
- ・子どもが危険に気付いて判断したり、事故等に遭遇した際に被害を最小限にしたりするための安全に関する自己管理能力を身に付けられるように援助する。
- ・事故やケガ、災害等の緊急時に子どもの安全が守られるように、対応方針を作成して定期的に訓練を行う。
- ⑨ 放課後児童クラブでの子どもの様子を日常的に保護者に伝え、家庭と連携して育成支援を行う。
- ・放課後児童クラブにおける子どもの様子を日常的に保護者に伝える。
- ・子どもに関する情報を家庭と放課後児童クラブで共有することにより、保護者が安心して子育てと仕事等を両立できるように支援する。
- ① 子どもが自ら進んで放課後児童クラブに通い続けられるように援助する。
2.障害のある子どもへの対応
(1)障害のある子どもの受入れの考え方
- ○ 障害のある子どもについては、地域社会で生活する平等の権利の享受と、包容・参加(インクルージョン)の考え方に立ち、子ども同士が生活を通して共に成長できるよう、障害のある子どもも放課後児童クラブを利用する機会が確保されるための適切な配慮及び環境整備を行い、可能な限り受入れに努める。
- ○ 放課後児童クラブによっては、新たな環境整備が必要となる場合なども考えられるため、受入れの判断については、子ども本人及び保護者の立場に立ち、公平性を保って行われるように判断の基準や手続等を定めることが求められる。
- ○ 障害のある子どもの受入れに当たっては、子どもや保護者と面談の機会を持つなどして、子どもの健康状態、発達の状況、家庭の状況、保護者の意向等を個別に把握する。
- ○ 地域社会における障害のある子どもの放課後の生活が保障されるように、放課後等デイサービス等と連携及び協力を図る。その際、放課後等デイサービスと併行利用している場合には、放課後等デイサービス事業所と十分な連携を図り、協力できるような体制づくりを進めていくことが求められる。
(2)障害のある子どもの育成支援に当たっての留意点
- ○ 障害のある子どもが、放課後児童クラブでの子ども達との生活を通して共に成長できるように、見通しを持って計画的な育成支援を行う。
- ○ 継続的な育成支援を行うために、障害のある子ども一人ひとりについて放課後児童クラブでの状況や育成支援の内容を記録する。
- ○ 障害のある子どもの育成支援についての事例検討を行い、研修等を通じて、障害について理解する。
- ○ 障害のある子どもの特性を踏まえた育成支援の向上のために、地域の障害児関係の専門機関等と連携して、相談できる体制をつくる。その際、保育所等訪問支援、障害児等療育支援事業や巡回支援専門員整備事業の活用等も考慮する。
- ○ 障害のある子どもの育成支援が適切に図られるように、個々の子どもの状況に応じて環境に配慮するとともに、職員配置、施設や設備の改善等についても工夫する。
- ○ 障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(平成23年法律第79号)の理念に基づいて、障害のある子どもへの虐待の防止に努めるとともに、防止に向けての措置を講ずる。
3.特に配慮を必要とする子どもへの対応
(1)児童虐待への対応
- ○ 放課後児童支援員等は、児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号)に基づき児童虐待の早期発見の努力義務が課されていることを踏まえ、子どもの状態や家庭の状況の把握により、保護者に不適切な養育等が疑われる場合には、市町村(特別区を含む。以下同じ。)や関係機関と連携し、法第25条の2第1項に規定する要保護児童対策地域協議会で協議するなど、適切に対応することが求められる。
- ○ 児童虐待が疑われる場合には、放課後児童支援員等は各自の判断だけで対応することは避け、放課後児童クラブの運営主体の責任者と協議の上で、市町村又は児童相談所に速やかに通告し、関係機関と連携して放課後児童クラブとして適切な対応を図らなければならない。
(2)特別の支援を必要とする子どもへの対応
- ○ 放課後児童支援員等は、子どもの家庭環境についても配慮し、家庭での養育について特別の支援が必要な状況を把握した場合には、子どもと保護者の安定した関係の維持に留意しつつ、市町村や関係機関と連携して適切な支援につなげるように努める。
- ○ 放課後児童クラブでの生活に特に配慮を必要とする子どもの支援に当たっては、保護者、市町村、関係機関と情報交換を行い、連携して適切な育成支援に努める。
(3)特に配慮を必要とする子どもへの対応に当たっての留意事項
- ○ 特に配慮を必要とする子どもへの対応に当たっては、子どもの利益に反しない限りにおいて、保護者や子どものプライバシーの保護、業務上知り得た事柄の秘密保持に留意する。
4.保護者との連携
(1)保護者との連絡
- ○ 子どもの出欠席についてあらかじめ保護者からの連絡を確認しておく。
- ○ 放課後児童クラブにおける子どもの遊びや生活の様子を日常的に保護者に伝え、子どもの状況について家庭と放課後児童クラブで情報を共有する。
- ○ 保護者への連絡については、連絡帳を効果的に活用することが必要である。その他、保護者の迎えの際の直接の連絡、通信、保護者会、個人面談等の様々な方法を有効に活用する。
(2)保護者からの相談への対応
- ○ 放課後児童支援員等は、育成支援を通じて保護者との信頼関係を築くことに努めるとともに、子育てのこと等について保護者が相談しやすい雰囲気づくりを心掛ける。
- ○ 保護者から相談がある場合には、保護者の気持ちを受け止め、相互の信頼関係を基本に保護者の自己決定を尊重して対応する。また、必要に応じて市町村や関係機関と連携する。
(3)保護者及び保護者組織との連携
- ○ 放課後児童クラブの活動を保護者に伝えて理解を得られるようにするとともに、保護者が活動や行事に参加する機会を設けるなどして、保護者との協力関係をつくる。
- ○ 保護者組織と連携して、保護者が互いに協力して子育ての責任を果たせるように支援する。
5.育成支援に含まれる職務内容と運営に関わる業務
(1)育成支援に含まれる職務内容
放課後児童クラブにおける育成支援に係る職務内容には、次の事項が含まれる。
- ○ 子どもが放課後児童クラブでの生活に見通しを持てるように、育成支援の目標や計画を作成し、保護者と共通の理解を得られるようにする。
- ○ 日々の子どもの状況や育成支援の内容を記録する。
- ○ 職場内で情報を共有し事例検討を行って、育成支援の内容の充実、改善に努める。
- ○ 通信や保護者会等を通して、放課後児童クラブでの子どもの様子や育成支援に当たって必要な事項を、定期的かつ同時にすべての家庭に伝える。
(2)運営に関わる業務
放課後児童クラブの運営に関わる業務として、次の取り組みも必要とされる。
- ・業務の実施状況に関する日誌(子どもの出欠席、職員の服務に関する状況等)
- ・運営に関する会議や打合せ、申合せや引継ぎ
- ・おやつの発注、購入等
- ・遊びの環境と施設の安全点検、衛生管理、清掃や整理整頓
- ・保護者との連絡調整
- ・学校との連絡調整
- ・地域の関係機関、団体との連絡調整
- ・会計事務
- ・その他、事業運営に関する記録